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肺がんをあきらめない
2016年4月19日
肺がんは日本人のがん死亡の第1位です。依然として喫煙がその危険因子ですが、近年はタバコを吸わない女性に発生する肺腺がんの頻度が増えてきています。肺がんは予後の悪い病気ですので、予防と早期発見が不可欠です。
予防はタバコ煙を吸わないようにすることが一番です。受動喫煙もできることなら避けましょう。早期発見は検診でのレントゲン撮影です。ただ、早期の小型肺がんはレントゲンで発見できないことも多く、CT検診での早期発見に期待が高まっています。CT検診は通常のレントゲンより放射線被爆がふえることや費用もかかることから、全員に行うべきかどうかの結論は出ていません。欧米の研究では喫煙歴のある55歳以上の男性ではレントゲンに比べCTで検診をした方が長く生きることが出来たという研究報告があります。CT機器の進歩もあり、近年では被爆線量を低くして撮影が可能なCTも出てきており、CT先進国である日本での研究も注目を集めています。
早期発見が出来ず、手術不能の肺がんの患者さんもあきらめないでください。近年の治療薬の進歩により、飛躍的に生存期間は延びています。数年ごとに新しい治療薬も開発されてきており、今を頑張れば次の希望を持てる時代になってきています。上皮受容体成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異というがん遺伝子が発見され、この遺伝子を抑えるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬が開発されたときは、生存期間が約2倍に延びました。残念ながらこの薬剤も耐性が出現しいずれは効果がなくなるのですが、この耐性となったがん細胞へも効果がある治療薬も発売される予定です。その他にもEML4-ALK融合遺伝子というがん遺伝子も見つかり、これもこの融合遺伝子の部分を抑え込む薬剤の開発で、生存期間が格段に延長しています。従来の抗がん剤も進歩し、以前のようなつらい副作用は軽減され、治療効果も良くなっています。副作用を予防・治療する薬剤も進歩し、今では定期的に外来で抗がん剤治療を受けながら、仕事を続けている人もいます。
さらに今年の話題は免疫療法でしょう。正確には免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれるもので、従来の活性化リンパ球などを使う保険適応外の免疫療法とは一線を画しています。従来の免疫療法が自分の免疫力を高め、がん細胞を排除しようというものでしたが、実はがん細胞はその人の免疫機構からすり抜ける力をすでに獲得しているので、免疫力を高めても効果を上げることはできませんでした。一方で免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫システムからすり抜けるところを阻害して、正しく認識させるための治療薬です。がん細胞を異物と正しく認識することで免疫力を高めずとも、もともとある体の免疫システムががん細胞を排除してくれるようになります。この治療の画期的なところは、今までの抗がん剤のように耐性が出来たり、治療をやめると再燃するといったことが無く、治療効果が長く持続する患者さんがいることです。すべての患者さんにこのような効果が出るわけではないのですが、もしかしたらがんを完治させることが出来るかもしれない薬剤として期待されています。まだ承認後まもない薬剤であり、十分なデータはありませんし、副作用もありますので、専門家のもとで使用すべき薬剤と言えます。
当クリニックではがん地域連携パスや抗がん剤治療の副作用対策、疼痛緩和など、がん診療にも関わっております。
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